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■第二十五話
真夏の夜のトンネル
〜10年前の出来事を改めて振り返って〜

注:この作品は当サイトのメルマガ「路地裏通信」で公開したものです

■その2:仕事の後の楽しみ


仕事を終えた夏の夜、私と別の部署の女性、そして私の部署で働くアルバイトの男子3人で、駐車場に停めてあった私の車の周りに集まり、他愛のない会話を交わしていた。
当時流行っていた出来事などを話していたと思うのだが、その内容までは流石に記憶していない。

当時の私も当然若かったし、集まっていたメンバーも年頃の男女だから、それなりの時を過ごせば空腹も覚えてくるだろう。
誰となく


「おなかがすいたよね」


と始まり、その途端に皆が私の車に乗り込み、気の向くままに車を走らせる。
目的地は勿論「深夜でも営業している飲食店」である。
その時間帯に営業している店は、当然限られてくるものであり、その時に入った店は、新横浜駅のちょっと外れにある“すかい何とか”とかいう有名な某ファミレスであった。

当時のこの店での個人的なお気に入りのメニューは、「カニピラフ」と「ハンバーグ&シュリンプ」であった。
両者とも捨て難いメニューなのだが、前者は量的にやや不満だが、金銭的には文句無しにリーズナブルで、そういった意味ではナンバーワンだ。
後者は、味、量、共に文句なく、未だに友人との会話などで、その手の話題が出たときには


「あれは良かったよねぇ」


と語られる程の逸品であり、私の周りでは文句なしのメニューであり、個人的にも“伝説の逸品”だと思っている。
しかしこの素晴らしいメニューにも欠点がない訳ではない。
味と量を満足させてくれる品だけあり、お値段もそれ相当なのである。
かといって、私1人であれば決して払えない金額ではない。
いくら値の張った品でも、所詮はファミレスであるので、たとえセットで頼んだとしても、せいぜい2000円台である。

しかしこの時は、「カニピラフ」を私は選んだのだが、なぜかと言えば、この時のメンバーが大きな要因といえる。
再びメンバーを書くと、私を除くと


別の部署の女性1名

私の部署のアルバイト3名


となる。
この状況下に置かれると、どうやら私は“見栄”を張る癖があるらしく、


「女性にお金を出させるワケにはいかない」

「年下に払わせるワケにはいかない」


などと考えてしまう。
しかし、だからと言って決して私が“お金持ち”なのではない。
上にも書いたとおりの、しがないサラリーマンであり、しかも新入社員という立場である。
お金の余裕など持っている筈もない。

お金の余裕は無くとも見栄は張りたがるこの性分…。
男のサガが成せる業か、はたまた単なる“意地”なのか…。

そんな事は、とうの昔の話なので忘れてしまったが、同行した仲間にご馳走した事と、財布の中身がにわかに寂しくなった事だけは10年以上もの時を経た今でも、刻銘に覚えている。



私のフトコロを犠牲に仲間の空腹が満たされ、飲み物をすすりながら他愛も無い会話を繰り替えす。

会社での些細な出来事、恋愛話、身の上話、世間の話…。
ひと通りの会話も一段落し、誰となく


「これからどうする?」


と言い始めた。
その時点で、おそらく午後11時前後であり、皆が翌日も仕事を控えた身であるから、ここで“お開き”が筋である。
当時は朝の6時に起床している身であり、これ以上の夜更かしは、まず確実に“寝坊”という社会人としては痛恨のミスを招く事となる。

それだけは避けねばならない…

しかし、それでも遊び足りない年頃である。


そんな事を考えていた時、この集いでの紅一点の女性、仮に“T橋”が


「なんだか帰りたくないよね…」


と、視線を窓の向こうに送りながら寂しげなトーンで言う。


この彼女の一言から、同行したアルバイト諸君たちの気持ちもたかぶり、結果として神奈川某所の有名な心霊スポットへと向かう事になるのだが、それは追々に書くとして、次に彼女との霊的なエピソードを書こうと思う。


その3へつづく…

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