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■第三十話
津田山霊園で:改定版3
注:この作品は当サイトのメルマガ「路地裏通信」で公開したものです。

到着早々奇妙な物体を目撃してしまい、結局霊園内に入ることなく帰路についた我々であったが、その車中、後部座席に座っていた私が、なぜか突然叫んでしまった。


「猫が絡んでくる!!」


これは今思い出しても不思議だ。
本当に突然、こんな突拍子もない事を、いきなり叫んだのである。
あの時、なぜこんな事を言い始めたのか、未だに全く理解できない。
全く理解は出来ないでいるのだが、その後の展開は、確実にそれ≠ェ待ち受けていた。


私の突然の叫びに某コンビニ・マネージャーが


「何いってんだよ!」


と、私に問う。
その問いに対する返答は実に困った。
なぜなら理由なんて無いのだから…。
ただ答えられる事は、


「ネコが絡んでくる」


だけであった。
理由なんて無い。そう直感的に思っただけなのだから…。


そんな摩訶不思議な雰囲気に包まれた時、車を運転していた某コンビニ・マネージャー様が突然


「うわぁぁ!ネコだぁぁ!!」


と叫んだ。

我々が進むその道の先に、1匹のネコの死体が転がっていたのだ。
何も無い普段でさえ、道端に転がるネコの死体を見て良い気持ちなどしないのに、それが珍妙な言葉を私が叫んだあとなのだから、恐怖感もひとしおであった。

そしてその後の光景が、更に恐怖感を引き立たせた。
行く道、行く道、猫の死体が転がっていたのだから…。


「お前があんなこと言うからだ!!」


某コンビニ・マネージャー様が、半ば怒りを出しつつ私にそう言った。
確かにそうかもしれない。
私が「ネコが絡んでくる」なんて事を叫ばなければ、ネコの死体の多さも、単に「死体が多い」という見たままの事実だけで受け止める事が出来たのであろう。
しかしあの時は、そう叫ばずにいられない何か≠ェあった…。

しかし、仲間に嫌な思いをさせてしまったのは事実。

なぜあの時に、あんな事を叫んでしまったのだろう

と、後悔しながら、結局彼らと別れる事になった。


その帰り道…。
自宅へと向かう道の、とある曲がり角を過ぎた時に、またしてもあの


白い背の高い物体


が、私の視界に入ってきたのだ!


ウソだろ…


余りにも突然の出現に、もう言葉なんて出て来やしない。
考える間もなく、その場を立ち去ることだけを考え、闇雲に走り、近くにあった友人の家へ飛び込んだ。

ことの一部始終を、その逃げ込んだ先の友人に話す…。
しかし案の定、彼は全く信じてくれない。
信じてはくれなかったが、私の異様なまでの脅え様は容易に察したのかであろうか、


「一晩泊まって行け」

と、私に言って下さり、その言葉に甘える格好で、その友人の自宅にて、朝を迎えたのであった。


その後の展開は、特に何もなかった。
霊に憑依され、辛い毎日を送る…なんて事もなかった。
同伴した某コンビニ・マネージャー様は、コンビニ店長を経て、現在は練馬の某所でご存知の通り、某コンビニのオーナー≠勤め忙しい毎日を送っており、また度々私の日記にも登場している。
白い物体が見えたあの女性も、現在は結婚し出産を2度経験し、幸せな毎日を送っている事らしい。
以後の生活が、何事も無かったのが救いだ。
何かが起きていたら、それこそ一生後悔して行くのだろうから…。



車社会に支配された毎日。
その例に漏れず、車はほぼ毎日運転する状況である。
時折道の片隅に転がるネコの死体を見つける。
その死体を見るたびに、あの時を思い出してしまう。
そして願う…


「これ以上、ネコの死体は現れないでくれ」


と…。

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