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| ■第一七話 悪い冗談〜前編〜 |
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| ちょうど3年経とうとしているのか・・・ 思えば・・・あの時も今日と同じ様に暑かったと思います・・・ 私が20代最後の夏、義理の兄で私の嫁の実の兄が結婚する事になった。 当然その結婚式には出席する事になります。 義理の兄はなかなか人間も出来ており、その結婚は心から祝福しております。 しかし正直な所・・・ 私は、その類の堅苦しい席は好きではなく、親戚関係の挨拶を 交わすなんて事は実に苦手な行為であり、挙式の一週間前付近から ”憂鬱な気持ち”になった事を思い出します。 「その日がきて欲しくないな〜」 などと嫁に幾度となくこぼし、日に日に憂鬱さも増して行き、挙式の数日前などは 「その日なんで無くなれば良いのに!」 などと義兄に対し実に”バチアタリ”な事を言っていました。 当然その言葉が”バチアタリ”な事は、その時も認識していたのですが 如何せん挙式に近付くにつれ”憂鬱さ”も加速して行き、その”憂鬱さ”と共に ”その日が無くなれば・・・”と言った思いが妙に強くなって行く・・・ 義兄の挙式の前日。 挙式は早朝と言う事もあり嫁が予めスーツの用意を颯爽と始め、 その横で気の乗らない私が何をするでもなく、その姿を眺める。 そんな私を嫁は、さぞかし”だらしの無い亭主”と思ったであろう。 私に半ば呆れた御様子で言葉を放つ。 「靴下はどうすんの?」 私は「黒いヤツ」と答える。 「ベルトはどれ?」 私は「黒いヤツ」と答える。 「ネクタイは?」 私は「黒いヤツ」と・・・答えると嫁のお怒りが飛んでくるのを察知し、 「黒いのが好みなんだよね♪」 と、冗談になる様に努力し、言葉を選んだ。 ・・・しかし怒られたのですがね。 しかし”黒いネクタイ”に妙に引かれるモノを感じたのは気のせいか? いま考えても答えは導き出せないが、その嫁とのやり取りを終えた時、 例の”憂鬱さ”と”その日が無くなれば・・・”と言った思いが 一層強くなった事は私の中では事実である。 その後、私達の自宅に妹と妹の彼氏、そして私の実の母が訪れた。 時を同じくして”妹”と”彼氏”が、両家族公認の結婚を前提とした 同棲生活が義兄の結婚と偶然同じ日に始まる事となっていた。 「めでたい事は重なるんだねぇ」 と言ったか言わないかは正直覚えていませんが、 私の家で家族の会話が久しぶりに弾んだ。 その時、私の弟は都合によりその場にはいなかったのですが、 私の自宅に向かう車中、偶然にも弟の車とも擦れ違ったと 母が言っていたのを思い出します。 「偶然は重なるんだねぇ」 と言っていたかどうかも分かりません。 しかし・・・ちょっと重なり過ぎでは? そんな疑問は多少なりとも抱いており、 ますます”例の思い”は加速的に強くなって行く。 以前その原因は、”結婚式へ行く事”以外は思い付かない状態であり 結局「それだけが原因なんだ」と自分を言い聞かせるも・・・ 正直”納得”は出来ないまま明日の早起きに備え珍しく床につく。 その時、夢を見たかは覚えていない。 ”例の思い”は常に続いていたが、とりたてて記憶に残る夢は見ていないと記憶する。 ただ・・・思うに夢を見る”暇”が無かったんだと思う。 早朝・・・確か4時頃ではなかろうか・・・ 一本の電話のベルが私の睡眠と”見るべき夢”の邪魔をした。 本日行なわれる挙式関係の電話だと思ったのですが、 電話の主は意外な事に、昨日顔を見せた母親であった。 寝起きで不機嫌な私は半ば苛立ちながら荒い言葉で対応するのだが 母の言葉を聞いた後、徐々にではあるが苛立ちから不安、焦りへと変わっていった。 そして思い出した様に昨日から続いていた”例の思い”がいよいよ本性を見せ始めた。 「弟が交通事故を起こしたらしい・・・」 愕然とする私の心境とは裏腹に早朝の日差しは清々しい物であった・・・ 後編へ続く・・・ |
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