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■第三十三話
オメデトウ…

 心霊スポット関連の書籍作成に携わった際の出来事。

 その書籍における私の仕事は、関東全域の心霊スポットを短期間で取材するという、なかなかハードなスケジュールであった。
この取材を本業としているのならば、ハードだの何だだの文句も言えないのだが、実際は別に仕事を抱え、この心霊スポット取材は、あくまで趣味の延長線のものである。

「あー大変だぁ〜!」

なんて愚痴も当時は確かに出たのだが、それも今となっては良き思い出だ。

 そんな話はさておき、実際問題として関東エリアを短期間で1人で巡るのは、非常に難しい。
なので、他のサイト管理者と協力しながら仕事をこなすというスタイルをとっていた。
異界への招待状:http://www.occult-web.com/」の管理者、やっくん氏である。
 お互いの住まいの関係上、基本的に私は南関東、やっくん氏は北関東を受け持っていたのだが、時にスケジュールが合えば合同で取材したりもしていた。

 確か栃木県の某所に向かう道中であったと思う。
 周囲が薄暗くなってきた時間帯、やっくん氏の運転で、氏が個人的に気になる現場に向かいたいという事で寄り道し、その帰路であったと記憶している。

 周囲は典型的な田舎であり、暗くなってきな眼目に畑の広がる姿が見えてていた。
その畑には、所々に幾つかの石柱がまとまっている場所が見られた。

(ああお墓があるんだなぁ〜)

なんて思いつつ、より暗くなる周囲を、特に意識するでもなく眺めていた。

 そうして眺めていると、畑のあぜ道をソロリソロリと歩く人影が目に入った。
おそらく畑仕事をする地元の方なのだろう。
それにしても、こんな暗くなるまで畑仕事をする方とは、何と勤勉な方なのだろう。
思わず感激したのを覚えている。
他方で、目の前ですら見え辛くなった状況での仕事は危険では?なんて、余計な心配もついしてしまった。
 とにかく、その勤勉さに感激し、車を運転するやっくん氏にこう話した。

「いやーこの辺の人は頑張るんですね。こんなに暗くなってまで畑仕事をするなんて、本当に真面目なんだな〜」

何しろ今や古い話なので、実際にこう話したか記憶が定かではないのだが、こんな風に話したのは間違いないだろう。
すると、それを聞いた氏は、妙に“キョトン”とした顔で私を見た。

「いやだから、あのお墓辺りでソロリソロリと歩いて…」

そう私が説明すると、半ば呆れ顔…というのも大袈裟だが、ため息混じりに氏はこう語った。

「いやいや、こんな田舎に住む人は、明るくなった頃より活動し、暗くなれば家に帰るのが普通なんだよ。暗くなってまで畑仕事をする人なんて滅多にいないよ」

そう言われてしまうと、確かに納得してしまう。
しかし、現にあの墓辺りを歩く人らしき姿を確かに見たのだが…。
そんな事を考えていると、間髪入れずに氏がこう言った。

「大体そんな人の姿なんて無かったし」

私は困惑しつつも

「いやいや!いたってば!」

と反論するも、

「いなかったし、いる訳もないでしょ」

と言われてしまう。

…ぐぬぅ…

この、見えたり見えなかったり、存在していたりしていなかったりの、微妙なモノと言えば、こんなサイトを運営していれば自ずとこう答えが出てしまう。

(幽霊だったのでは???)

そう言えば墓の横というのも、何となく妙な気がしてきたし、考えても見れば歩いていたというよりは“滑っていた”様な移動であったと思えてくる。

 複雑な心境に陥り、すっかり言葉を失いつつ、やっくん氏の顔に目をやると、氏は何とも意味深長な笑みを浮かべ、私にこう言った。




「オメデトウ…」



 確かにこうして作品を書くネタを入手したのは、こうしたサイトを運営する者としては喜ばしい事なのかもしれない。


しかし…やはり未だに複雑な心境なのである。

あれって…やっぱ霊なのかなぁ……。


やっくん様、ご無沙汰しております。
なかなかご連絡できなくて申し訳ございません。
体調が芳しくないというのは、サイトを拝見して知りました。
無事に回復する事を祈っております。
回復した際には、機会を作りどこか御一緒しましょう。
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