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■第十四話
小ネタ集:弟編

基本的に、それほど仲が良かったワケではなかったが、弟との霊的想い出は少なからずある。
よく弟を車に乗せ心霊スポットと呼ばれる場所に行ったものだ。
川崎の「第三京浜のシミ」を教えてくれたのも弟だし、鶴川街道沿いに存在する某大学に出没する霊の話もヤツに教わった。

この大学には、私と弟、それと私の友人の三人で行ったのだが、正門だか裏門だかに差し掛かった途端、目前に見える校舎の窓に人影を早速発見してしまう。
時間は深夜の三時程だったはずだ。

その人影は弟にも見えるらしく、実在する人間だと最初は思った。
しかし私の友人は見えないと言う。
私と弟は口をそろえて彼に説明する。


「校舎の三階の右から5〜6個位のトコロの窓だよ」


ここまで説明しても彼には見えない。


「黒い人影が立ってるじゃん」


弟は苛立ち半ば怒りながら彼に言う。
しかし見えない物は見えないようだ。
私と弟はそれは「霊」だと勝手(?)に判断し、また乗り越えて入ろうとしていた門は、余りにも厳重であった為に、そのまま帰宅することとなった。

果たして、アレがは本当に霊であったかは正直疑問である。
でも、確かに黒い物体、しかも人の形をした影のような物が、私と弟のみ目撃出来たのは事実である。

話変って、弟が私に一つの噂話を持ちかける。

「稲城から多摩に向かうくねくね道あるじゃん。そこにフランス人形を持った子供の霊が出るんだって。」

私は流石にその噂は、余りにも何なんで疑問を抱いた。
私は弟に

「そりゃ〜絶対にウソだ」

と真っ向から否定!
弟はよくウソをつく時があるので、今回もソレだと思った。
弟は笑いながら

「でもさ、行ってみなけりゃわかんないじゃん。」

そりゃそうだ。
そんなこんなで、その晩に、その地に向かう事になった。

進や二時程に現地に着く。
曲がりくねった道、しかも道幅は狭い為車は下手に路駐出来ない。
まずはその道を車で走る事に…。

なんと言うか、高台の天辺に作られた道と言えば良いのか?
くねくね道特有の、危険を知らせる為の「デコデコ舗装」が設けられる、とても走りづらい道であり、それは現在も変っていない。
そんな道を、ゆっくりと周りを確認しながら走る。

「おい…居るか?」

私は弟に聞く聞く。

「いないな〜…」

私は心の中で、

(ホレそんな霊はいないだろう)

と思っていた。

その道の片側は崖状になっていて、その下には団地が聳え立つ。
余りにも霊の出るシチュエーションとは、かけ離れている気がしてならない。
そう思っていた矢先、たまたま私と弟の視線の先が一致した。

前方の右側、先程の崖状の方。
その崖から「何か」が上がってきた!

私は車のスピードを落とし、じっくりと見てみる。
フランス人形は持っていない。
それどころか「女の子」ではなく「オヤジ」であった。

「なんだありゃ?」

思わず私は口にする。

「おい!あのオヤジ歩いてないぞ!」

弟は意味不明な事を言い出した。

「ばかやろう…歩いて上に来たんじゃん!」

「違う…歩いてんじゃない…滑っているんだ!」

…そう言えばそうであった。
下は結構な急斜面でありながら、その「オヤジ」は、スイスイと昇ってきた。
それはまるで、エスカレータに乗っているかの様である。
私達は、そのオヤジを車で通りすぎながら確認したが、服装は作業着のような格好であった。
私は運転中なので、つぶさには観察出来なかったが、弟の話では

「足」がなかった

との事らしい。

私達は車をUターンできる所まで走らせ、再びその場所へ向かった。
その間、約三分…。
しかし、その場に着いて周りをいくら確認しても、先程の「オヤジ」の姿はない…。
私達は、またも勝手に「霊」だと判断し、その場を去った。

その帰り道、弟と二人で某有名カレー屋チェーン店に入り、カレーを頬張りつつ先程の「オヤジ」は一体何だったのかを話した。
しかし、話したトコロで答えなんて出て来ず、結局は「霊」だと言う事で論議は終局を迎えた。

喧嘩も絶えない仲の悪い兄弟であったが、以外とこんな想い出もあったんだなと、この話を書きながら思った。
時が経つと、嫌な想い出も美化されるとよく聞くが、嫌な想い出はやはり嫌な想い出でしかない。
しかし、その中に埋もれていた楽しい想い出が、時が経ち思い出される事で、彼に対する思いが美化されていくのであろうと、そう思う…。

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