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■第十二話
下北沢の某ライブハウスで

私は音楽が大好きでありまして、よくライヴを見に行ったりしていました。
大ホールのライヴも良いのですが、小さなライヴハウスでの演奏も、とても雰囲気があってオツなモノです。
でも、ライヴハウスって不気味なモノを感じたりもします。
真っ暗で、しかも下北沢辺りのライヴハウスは、それこそ歴史あるモノが多くて、決して綺麗なものではありませんよね?

その下北沢の某ライヴハウスで、私が尊敬するミュージシャンがライヴを行うと言う事で、早速見に行きました。
お目当てのミュージシャンだから、とても楽しい一時だったんですが、お客も沢山いて渋々階段に座りながら見ていました。(このライヴハウスは地下に建てられています)

ライヴの途中のMCで、そのバンドのヴォーカルがいろいろ話している途中の事です。
私達は当然ヴォーカルの彼の言葉に耳を傾けていました。

そんな時です。
我々の座っている階段の後ろで


「ぎしっ…ぎしっ…」


と、かいだんを登る足音がする…。
当然誰かが階段を登っているモノだと思ってしまう。
それとなく後ろを振り返る。
すると…

誰もいない…。


(まあ空耳か錯覚だろう)

楽しいライヴの真っ最中です。
まさか「幽霊」なんて事、考えたりしませんし考えたくもありません。
あまり深くは考えず、また彼らの演奏に集中する。

それから時間で言うと一分から二分程でしょうか?
また階段が音を立てる…。


「ぎしっ…ぎしっ…」


さすがに気になってくる。
しかし尊敬するギタリストのライヴの演奏の方が数段気になってしまう。
彼らの演奏に再び集中するモノの、また数分後には例の音。


「ぎしっ…ぎしっ…」


である。

(こりゃ〜何かいるな…)

余りにしつこい階段の音に、その存在を分らずにはいられませんでした。
しかし我々の目的はライヴである。
当然「その存在」は無視して演奏を楽しむ事にする。

その時である。
例の階段の音が心なしか先程よりも大きく、そして激しく聞こえる。


「ぎしぎし…ぎしぎし…」


私は心の中で


(あまり良い雰囲気ではないな〜…)


と思った。

次の瞬間である。
私の背中に激痛が走る!



「バシッ」!!



殴られたのか叩かれたのか、もう振り向かずにはいられない。
後方を確認すると「人間」は誰もいない。
そう「人間」は…。

次に、隣に座っている友人に目をやると、その友人も青い顔をしていた。
なんと、その友人も同じ体験をしていたのでした!

ライヴが終わり、その友人とに聞いてみると、やはり彼も背中を叩かれたそうだ。

「怖かった」

彼はしきりにそう語っていた。

でも私は彼に1つの事実を、その時に語っていない。
現在も教えてはいない…。

私が背中に衝撃を受けた時、後方を確認して「人間」はいなかったと先程は書きました。

「人間」はいなかったと言う事は、人間以外がいたとも解釈できる訳でして…。

要するに、現世の人間とはとても言えない、半透明の人の顔が、そこには浮かんでいたのでした。
しかも、私が友人の方に目をやった時、彼の背中に、その顔が激突していたのである。

要するに、我々は手で叩かれたのではなく、霊に「頭突き」を食らっていたのです。

友人に激突したのを見た時に、その「顔」は姿を消した。
その後彼に憑依したかどうかは分りません。

しかし激突し消えていく姿は、彼の背中の中に入っていく様にも見えました…。

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