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□この話は「あちこ様」が、
2003年10月2日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第八十四話
誰かがやってくる

初めての投稿です。

あれは今から20年程前、私がまだ高校生だった頃の話です。
事情があり、父、母、兄、私の家族4人で、築20年の庭付き一戸建てに引っ越した時にその恐怖は始まりました。

父も母も兄も、夜の商売だったので、夕方6時ごろからは、その家で私はいつも1人でした。怖がりな私は、家族が仕事に行くと家中全ての鍵を施錠するのが習慣になっていました。

ある日の晩、といっても午後10時を少し回った頃のことです。
洗面所の奥の、裏口のドアがギィーと開く音が聞こえ、その後、バタンッとドアが閉まる音がしました。
そして洗面所の引き戸がガラガラと開く音がし、玄関前の踊り場を誰かが歩く足音がしたのです。
その足音は、私のいる2階へと続く階段を上ってきました。


(兄貴か…。今日はやけに早い帰宅だな)


と思いましたが、足音は階段の途中まで来て、しなくなりました。
変だなと思い


「兄貴ー?」


と声を掛けましたが、返事がありません。
部屋を出て見てみると、下の部屋の電気も消えたまま、誰も帰ってきた様子はありませんでした。


「鍵閉め忘れて誰かが侵入したのかな?」


と急に不安になり、家中の電気を付け鍵を確認しましたが、全て施錠されていました。


「じゃあ家族が忘れ物をしたのかな」


と考え直し、翌日三人に


「夕べ何か忘れ物して取りに来た?」


と聞いてみましたが、誰も戻ってきていないとの事…。
では、私の気のせいだったのかな…とも考えましたが、妙にはっきりとした記憶。
しかし1日学校に行って帰ってきた頃には昨夜の出来事も、すっかり忘れかけていたその日の夜、その足音はまたやってきたのです。

そして、その後も毎晩午後10時から12時の間にやって来たのでした。
ある日、兄が



「おまえが言っていた足音なんだけど…確かに俺も聞いた。この家で何があったか調べてみるよ」


といいました。
調べた結果、この家ではノイローゼになった母が、三人の幼子を残し、


首を吊って亡くなった


という事が判明しました。
よく見れば、古い柱に、三人の子どもの背丈をしめす傷跡が、いくつも残っていました。
おそらく、三人の我が子に会いたくて、少し早い時間帯に来ていたのではないかと思います。

私たち一家はそれから間も無くして、この家を出る事にしました。

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