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□この話は「匿名希望様」が、
2003年7月24日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第七十七話
虫の静けさ

それはある夜のことでした。

当時私は飲食店でアルバイトをしていました。

いつものように、フリードリンクとしてお茶の準備をするため、

裏方に下がった時のことです。



そこのお店では、お茶を作るところがちょうどお店にでる扉の影にかくれるところで、

角の小さなすみっこでつくることになっていました。

私がお茶を作り始めた時、ちょうど、お店はにぎやかになり、

ほとんどの裏方の人たちは表のほうに出てしまい、

私だけがひとり残り、お茶を作ることになりました。



その時、私は入り口の扉に背を向け格好で立っていました。

しんと静まり返った中、私はもくもくとお茶を作っていました。

ふと気づくと、私の後ろに人の気配を感じました。



「誰だろう?」



そう思い、何気なく後ろを振り向くと…


まず私の目に飛び込んだのは“女性の両足”。

ちゃんと靴も履いていて、ヒール靴です。

制服もちらりと見えて、同業者かと思って少し安心しましたが、

その女性の顔を見つめることは、その時は何故かできませんでした。

というのも、その女性は私と同じ制服を着ていましたが、



ずっと私をみている様な感じで、何もいわずに私の真後ろに立っているのです。

しかも、私に息をかけるように、ぴったりと…。



私は瞬時に恐怖心に支配され、まったく声が出ませんでした…。





入り口にいるのに、何の音もなく入り、

しかもヒールを履いていた女性は、なぜ無音のまま

私の背後にいたのでしょうか…

今になって思い起こしてみても、

あの時の寒気と恐怖を感じずにはいられません。

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