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□この話は「ゆた様」が、
2002年12月26日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第六十一話
戦火の記憶

この話は私が高校時代の話です。
ですので詳細は事実と異なってしまっているかもしれません。





私の高校の修学旅行は九州でした。
福岡から長崎・熊本と回って福岡に戻るというコースでした。
このお話は2日目の長崎で起こった事です。

私達は一日自由行動で最後に原爆の記念館にて集合というコースを取りました。
あらかた見終って比較的早めに集合場所に行ったと思います。
時期は初夏の頃。早めに行ったとはいえ、先に何人かは集まっていました。
先生は集合場所の入り口で帰ってきた生徒に声をかけていました。
そこにA子とB子の班も戻って来ました。
戻ってきたときA子もB子もそれほど目立って変ったところはなく印象は残っていません。
私達の班は馬鹿話をしながら女子高校生らしくはしゃいでいたのだと思います。

まだ集合場所に人がまばらな頃、いきなりA子がしくしくと泣きだしました。
前からA子の祖先には巫女が何人もいるという話を聞いていたので


(あぁ…何かのパフォーマンスだな。原爆記念館だから…)


と思い、その時は気にもとめませんでした。
A子の嗚咽は段々と大きくなっていきました。


その時です。


B子が


「ぎゃっ」


というと一緒に泣きだしました。
その声を先生も聞きつけたのだと思います。
A子とB子に近寄ろうとしました。
A子はそれを見たのか見なかったのか、いきなり傍にある水道にかけより蛇口から何杯も水を手ですくい被りはじめたのです。
先生は慌ててA子を蛇口から引き離すとどこかへ連れて行ってしまいました。
後に残った私達は同じく残されたB子に話を聞きました。
彼女いわく



「ここまで来る間にも沢山の人(?)がすがりついて大変だったらしい。泣き出すまではそれでも払っていたらしいが、さっきは黒い人型がA子に覆い被さって入ろうとしていたのでびっくりした。」



とのことです。





これが、戦争でなくなられた方かどうかはわかりませんが、その後A子もおかしくなると言う事はなく、残りの行程を共にしたのでした。


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