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□この話は「タッツー様」が、
2002年11月13日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第五十六話
海岸沿いの某ホテル

もう数年前のことです。
まだ付き合い始めて三年程だった私達夫婦は、夏のある日、静岡県熱■市にある、Gと言う名の観光ホテルに一泊旅行に出掛けました。

そのGと言うホテルは、熱■海水浴場近くにある観光名所

「お■の松」

のすぐそばにありました。
その周辺には、某「つ■やホテル」や某「大■ホテル」等が建つ、良い意味でのホテル街に建っている、なかなか歴史のあるホテルでした。

階段状に建つそのホテルは、山と海が迫った傾斜のキツイ熱■の街ならではで、自室から大浴場などに行くのは大変苦労しましたが、なかなか良いホテルでした。

海水浴を楽しんだ後、チェックインし、夕食や入浴も終えて、私達は十二時前に床に就きました。
しかし、二人とも遊び疲れているのにも拘らず、なかなか寝付けません。
まぁ、それは悪寒でも何でもなく、僕の下心があったからですが…。


「この部屋、何か…ヘン」


隣りで寝ていた妻(当時はまだ彼女でしたが)が、突然言い出しました。


「えっ、何が?」


僕は、突然そんな事を言われ、驚いて起き上がりました。


「何か、イヤな予感がするの」


彼女は、そう言いました。僕は


「何て事を言うんだ、この子は」


と、彼女と旅行に来た事を少し後悔しかけました。


「もういいから寝よう」


僕はそう言うと、もう自棄で寝てしまいました。





それからしばらく経ってからです。
突然、僕は、身動きが取れなくなってしまいました。
生まれて初めて体験した


「金縛り」


です。
目だけは動きます。
横を見ると、彼女は何事も無かったかのように、スヤスヤと寝てしまっています。
僕は一生懸命体を動かそうとするのですが、微動だにしません。
時計は午前二時を指しています。


その時です。


窓の襖の向こうをスーッと、

何か白いものが通り過ぎました。

しかし、ここは五階です。
ベランダもないこのホテルの窓の外を、深夜の二時に、何かが通り過ぎたのです。





翌日、彼女にその話をすると


「何バカなこと言ってるの。私は、アナタが変な気を起こさないように用心して言っただけよ。」


と、笑われてしまいました。
が、その彼女も、その日の海水浴中、突然、何もない海の中で足を取られ、溺れそうになりました。
偶然、僕が近くにいたので、彼女は助かりましたが、彼女も僕も何が何だか分からずに、そのまま、その日はさっさと引き上げ、しばらく熱■のある伊豆方面には近づかないようにしていました。





それからまたしばらくしてから、そのホテルは


倒産


してしまいました。
倒産した理由ははっきり覚えていませんが、それからしばらく建物だけが、その場所に残っていました。

それからまたしばらく経った二年程前、その建物に不法侵入していた


浮浪者の不審火が原因


で、その建物は火災に遭いました。





現在、その場所は再開発がなされ、マンションかホテルかが建設中です。
しかし、僕らは、二度と熱■を訪れる気にはなりません。

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