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□この話は「やぶ医者様」が、
2002年5月25日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第三十二話
○○に会っても…

J市の近隣に、「T山」と呼ばれる山がある。
ある日、私は病院の仲間たちとそこへ行った。

登山入り口付近で、植物を観察する人々と、中腹ぐらいまで登る人とに別れた。
私は登るほうに入った。途中までは車でも登れる道で、
私たちはしゃべりたおしながらのんびり登った。
途中、車どまりの場所で、古びた看板が草むらにぽつんとあるのを見つけた。

「ここで―――を見かけても、乗せてはいけません」

――――の部分は、赤いペンキで書かれており、
はげてしまってよくは読めなかった。しかし目を凝らすと、
「子供」と思しき文字が見えた。

――――子供を乗せるな??

私たちは顔を見合わせた。
「くま注意」とか、「マムシ注意」という看板はよくあるが、
この看板は何の意味があるのだろうか??

「そういえば、来る途中、降りて行く男の子とすれ違ったね。
もしかして、あの子はヒッチハイクの常連さんとか!」

「バカ言え〜、まだ5歳ぐらいの子だっただろう?」

「そういや、あの子一人だったね。親は後から来るのかね」

その場は、それで終わった。





私たちはそのまま見晴らしまで登り、そこで引き返してきた。
入り口で待っていた連中は、すっかり待ちくたびれていた。
そこで、途中で見た看板の話を、冗談で持ち出した。
すると、下にいた連中は怪訝な顔をした。

「俺達、ずっとここにいたけど、誰も降りてこなかったぜ?」

道は一本。登山道を外れれば、遭難してもおかしくはない程度の山。

―――――しばらく誰も何もいえなかった。





後日、この話を長野県警の知り合いにしたところ、彼はさらっと言った。

「ああ、またですか。こりゃ張り紙でもしといたほうがいいですかね」

どういう意味なのかは、聞けなかった。


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