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□この話は「rintarou様」が、
2012年8月11日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第二百七十五話
卒業写真

20代の時、バイト先の印刷所での体験です。

バイトでの3年間の実績と能力を買われ、念願の正社員となることが決まりそうな時でした。
バイトとして同期で入った一才年上のTさんも、同時期に正社員となることが決まり、お互いに喜んでいました。
それが起きるまでは…。

いつもの様に、仕上がりの検品をしていた時、Tさんが突然

「うわ、何だこれ」

と叫んでいました。
俺が

「どうしたの?」

と近寄ると、Tさんはとある有名女子大の卒業アルバムを検品してました。
Tさんが俺に、150冊くらいあるアルバムの1つをよこし、

「このページの集合写真を見てみろよ」

と言いました。
言われた通りにそのページを開けると、そのページは各同好会の集合写真でした。
そして俺も、そのページを見ていると、おかしな事に気がつきました。

それは、ツーリング同好会の写真でした。
6人の生徒が、ライダースーツを着て自慢のバイクを前にしてピースサインを決めている、そんな写真です。

その写真には、実はもう1人、要するに7人目の生徒も写っていました。
その7人目の女性が、何だか妙なのです。
7人目の女性は、ツーリング同好会とは似つかわしくない格好でした。
その格好とは、薄ピンクのワンピースで、しかも何故か後ろ向きの姿です。

しかも、まぁこれは当然といえば当然なのですが、検品していたアルバム150冊全てに、その女性は写っていました。

「何でツーリング同好会なのにピンクのワンピースなんだよ」

「しかも後ろ姿だぜ…」

そんな事を言いながら、それらをチェックのため1冊ずつ見ていたのですが、ある事に気が付きました。
その“ある事”とは、150冊の全てに写っていた女性の格好が、微妙に違っていた事です。
おもむろに、その妙なページを1冊ずつコピーし1枚ずつ重ね、パラパラ漫画の要領で1枚ずつめくってみました。

それを見た俺は、強烈な寒気を感じました。
何故なら、その7人目の女性は、最初は後ろ向きだったのに、徐々に正面を向き始めたのです。

「うわ!何で動いてるんだ?」

そんな事を言いながら、コピーしたページをめくっていた俺は、途中半分くらいの時に何故か手が痙攣して動かなくなってしまいました。
次を見ようにも、手が上手く動かせなくて次が見られません。

「俺にも見せてよ!」

そう言って、Tさんはコピーを手にし、パラパラと最後までそれを見ていた。
顔色を物凄く青くしながら、それを見ていたTさんの姿を今でもよく覚えています…。

翌日になり、最後まで見ていたTさんは、体調不良で会社を休みました。
体調が突然不調になり、病院で検査をしてみると、何と末期がんでした。
そして、がんが発見されて、たったの1ヶ月で他界してしまいました…。

7人目の女性とは関係があったのか、単なる偶然なのかは分かりません。
そもそも、その女性が何であったのかも分かりません。

ただ、もし俺が最後まで、その7人目の女性の動きを最後まで見ていたら、俺に同じ事が起きたのだろうか…。
そう考えると怖くてたまりません…。
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