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□この話は「オズ様」が、 2009年8月17日に投稿して下さった作品であります。 |
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■投稿作品第二百三十三話 トイレのお婆さん |
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今回は、私が一番最初に体験した事を書こうと思います。 一番最初の体験というより、もっと以前もあるんですが当時の記憶が曖昧で、とりあえずハッキリ覚えている一番最初の出来事がこの話です。 私の場合、何らかの恐怖体験をする時は、ほとんどの場合で友人や家族と一緒にいる時に体験している事が多いのです。 この話も私の弟と一緒に体験した話です。 30年経った現在でも、弟とその時の話をする事があります。 私が小学4年生の夏休みの時です。 他のところではどうか知りませんが、私の住んでいたS県G市では「子供会」というモノがあり、一年を通して様々な行事を行って子供同士の(親同士も)交流を図っていたのです。 夏はキャンプやBBQ、冬はクリスマス会等々…。 子供が大勢集まってワーワー騒ぐのはとても楽しかったのを覚えてます。 夏休みに入り、夏休みの宿題をすぐに終わらせるような優等生でもありませんでしたから、毎日遊びほうけていて楽しくてしかたありませんでした。 そうしている内に、夏休みの一大イベント「子供会夏休みキャンプ」の日がやってきました。 朝、地区の子供達(両親含め)が集まり、テントを張って、ニジマスのつかみ取りやBBQ、夜は花火大会や肝試し・・・毎年楽しみにしていたのです。 小学4年のその年は、3歳下の弟も小学1年で初参加です。 それはもう楽しみで仕方ありません。 さて、当日になり近所の集合場所に集まり出発です。 目的地は、場所は明かせませんが現在はバス釣りでけっこう人気のある人口湖です。 実は・・・この人口湖、その昔、湖が作られた際にちょっとした怖い話があるんです。 具体的に書くとわかってしまうかもしれませんので止めておきます。 まぁその湖のすぐそばに、その霊を鎮めるための祠なんかもあったりして…。 今でこそ道路も広くなり、開けて明るいですが、当時は木々に囲まれ道路も舗装されておらず、なかなか雰囲気のある場所でした。 到着し、お昼のBBQも終わりに近づいてきた午後2時前くらいの事です。 突然、私はトイレに行きたくなりました。 友達はみんなワーワーやってますから、勝手に一人で行けばいいんですが、小学生のやる事ですから「連れション」仲間を探していました。 そこへ私の弟がちょこちょこやってきて 「お兄ちゃん、オシッコ行きたい」 と言うのです。 ちょうど良かった、これで連れション仲間ができた…と、二人仲良くトイレへ向かったのです。 そのトイレ…まぁだいたい想像はつくかと思いますが、たいして綺麗なトイレではありません。 …というより、どちらかと言えばかなり汚い部類に入ります。 男性トイレを入りますと、左手に洗面台、その奥に小便器が3〜4つほど並んでいます。 右手にはハッキリ覚えていますが、個室が3つ並んでいました。 入ってみると、個室のドアは数センチ開いた状態で閉まっており、私たち兄弟の他に誰もいません。 この時、今となっては慣れっこになってしまってますが、ザワッと全身の毛が総毛立ち、左肩をギューっと握りつぶされるような痛みが走ったのを覚えてます。 当時は何の予兆かもわからず、とりあえず出すもの出して早く皆のところへ帰ろうと思い、弟と二人で小便器へ向かいました。 弟が一番奥の便器、私が真ん中辺りの便器だったと思います。 用をたしていると…私のちょうど真後ろ、個室の辺りから低い声で 「ボソボソ…」 と唸るような声が聞こえたのです。 最初、本当に消え入るような小さな唸り声でした。 「あれ?」とも思いましたが、空耳かと思いまた用をたす事に集中し始めたのです。 すると…「ボソボソ…」また聞こえます。 「お兄ちゃん、何か声聞こえるよ」 弟にも聞こえているようです。 私の真後ろには扉が少し開いた個室が並んでいるだけです。 その向こうは壁を隔てて何もない雑木林です。 とりあえず気持ち悪いので、さっさと用をたしてトイレを出ようと考えました。 すると、最初は消え入るような小さな唸り声がドンドン大きくなってくるのです。 もうハッキリと聞こえます。 声の主は明らかに若くない、お婆さんのような女性の声です。 唸り声と思っていましたが、よくよく聞くとどうやらお経のようです。 小さかった頃ですので何のお経かわかりませんが、それがお経というのだけは認識できました。 もしかしたら、本当にもしかしたら…男子トイレに間違えて入ってきて、扉を少し開けたまま読経しつつ用をたしているお婆さんがいるのかもしれない…と、都合のいい解釈をしつつ、用を済ませた私はゆっくりと振り向いたのです。 すると、3つ並んだ個室の、明らかに声が漏れている個室のドアがゆっくりと開いていったのです。 残念ながら…というか、やはりというか…中には誰もいません。 しかし、その誰もいない個室の中からその声は聞こえてくるのです。 その頃にはもうトイレに響き渡るほど大きな読経の声になっていました。 弟が近くに寄ってきて 「誰もいないね」 と、無邪気な声で言ってきます。 突然 「よし、ボクが確かめてみる」 と弟はその個室に入っていったのです。 その頃にはもう私は 「これはもう完璧にヤバイ」 と確信してましたから、弟を引きとめようとして…勢い二人とも個室の中に入ってしまったのです。 相変わらず大音響でお経を唱えるお婆さんの声は聞こえます。 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ 「ほら、もう出るぞ」 と言って、弟を引き寄せようとしたところ、弟はボーッとした表情で上の方を見上げてます。 ヤバイ、ヤバイ、これはもう絶対にヤバイ そう思いつつ、私は弟の視線の先を追ってしまいました。 私たち兄弟が見上げた先には…案の定、いてはいけないモノ、見えてはいけないモノがいました。 個室の壁の上の方に、壁にかけられたお面のような感じで老婆の顔がいたのです。 その顔は、無表情ではありますがカッと目を見開き私たち兄弟を確実に見ているのです。 「ワーッ」 と声を上げた私は一歩後ろに飛びのき、個室を出る形になったのです。 その途端、個室のドアが 「バタン!!!」 と閉じられました。 私の弟が中に閉じ込められたのです。 ドンドン!ドンドンドン!!! 何をしても扉は開きません。鍵はかかってないと思うのですが、私がいくら押しても、弟がいくら引いても扉は開こうとしないのです。 唸るようなお経の声は一向に止む気配はありません。 この時の私はもう完全にパニックに陥ってました。 弟は何か得体の知れないモノに閉じ込められ、トイレ中に鳴り響く読経の中、泣き叫ぶ弟を置き去りにし、私は大人や友人のいる場所へ逃げ帰ってしまったのです。 「あれ?○○ちゃんは?」 私の親が尋ねました。 普通なら事情を話して助けに行くのでしょう。 今考えれば、そうするだろうと思います。 しかし、その時の私は 「知らない」 とだけ答え、テントに入ってしまい毛布に包まり震えていました。 約一時間後…弟は泣きながらグシャグシャの顔をして帰ってきました。 結局、個室に閉じ込められたまま上からお婆さんに見つめられ、お経をずっと聞かされていたようです。 不思議なのは…その一時間の間、何人もの人がトイレに行っているのです。 しかし、誰もお経なんか聞いてないし、トイレに閉じ込められている弟にも気づかなかったのです。 全然関係ないのですが…関係ないと思いたいのですが…最初にこの人口湖には作られた時に怖い伝説があると話しました。 後に父親から聞いた話、この人口湖を作ったのは私たち兄弟の先祖らしいのです。 その時からの因縁でない事を祈っています。 それから、この湖にはよほどの事がないと近づいてません。 今でも、弟とこの話をすると 「あの時、兄貴に逃げられたんだよな」 と責められてます。 |
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