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□この話は「地元ゼネコン様」が、
2008年3月13日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第二百二話
あまり怖くない話

 私は神奈川県西部地区にある建設会社に勤めているのですが、今から15年位前の話しです。

 当時は公共工事の発注も多く、冬場になると北海道と秋田から20名近くの季節労働者にきて頂いておりました。彼らの寝泊りする場所は、会社で借りていた木造2階建ての建物で、当時でもちょっと古い建物でしたが、自動車部品製造会社の寮として建てられた建物でしたので、大浴場や食堂があり、また部屋数も充実しておりました。

 ある日、総務部に所属していた私は総務部長同席の場で道路部長と道路部次長に相談をされました。話しを聞くと、季節労働者の方たちが入っている寮に

幽霊が出る

というのです。道路部次長いわく、気味悪がって寝不足になる者が多く、日中の作業に影響が出てしまっているとの事でした。私も総務部長も幽霊が出るなんて信じていなかったのですが、工事作業に悪影響を及ぼしていたのは事実でしたので、季節労働者の方たちに安心してもらう為に、お祓いをする事になりました。

 お祓いをお願いした先は、当社で保育園を施工した寺?の山主(山伏だそうです)兼園長をされている方で、年に1回か2回、火渡りの行事を行う寺?として地元では少しだけ有名です。山主様より、騒がしい昼間よりも静かな夜の方が霊が出やすいと言われ、夜の11時から私と総務部長同席のもと、2階の一番東側の部屋でお祓いをする事になりました。

 山主様は部屋の隅に向けて祭壇や祭具のようなもの並べ、お祓いを始めました。お経のようなお経じゃないような言葉を唱え始めてから間もなく、私と総務部長はほぼ同時に気付きました。天井の隅に

赤ちゃん位の大きさの煙のようなもの

が漂ってるのです。幽霊というには余りにもぼんやりとしていて、正直あまり怖くはありませんでしたが、やはりびっくりはしました。

 煙のような物体は、しばらく天井の隅を漂っていたのですが、お祓いの途中でだんだん薄くなり、やがてスッと消えてしまいました。

 お祓いが済んだ後、山主さんは言われました。

「ほとんど幽霊の実態は気のせいだったり、人為的なものだったりするけど、今日はちゃんと出ましたね。だけど顔や体がはっきり浮かびあがる霊もいるけど、今日は煙みたいでよく分からなかったね」

また、こんな事も言われました。

「幽霊は生きてる人には一切危害は加えません。ただ、出てきてはいけないのに出てきてしまう事がいけないんです。だからきちんとお祓いをしてあげて帰ってもらうんです」

と。


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