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□この話は「ひら様」が、
2007年4月18日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第百八十七話
月明かりに照らされて

初めまして。
最近こちらのサイト様を見つけ、内容を色々と拝見し楽しませて頂いております。

私は死ぬ程の恐怖…というものは未だ体験したことがないのですが、中学生〜高校生辺りには何度か心霊体験、と申しますのでしょうか、そういう体験をしたことがあります。

時が経った今では、そういったことは殆どないので少し残念だったりもするのですが、思春期辺りには結構霊感やらがない人も見ることがあると言いますし、私もその類だったのかも知れません。

これは私が中学2年生の頃に体験したお話です。

私が実家と呼ぶ家は2つあります。父母私と4つ下の弟の4人家族で住んでいるアパートが一つ。父方の祖父祖母が住んでいる住居兼店舗が一つ。実家は自営業を営んでいるので、父と母は祖父祖母の住む住居兼店舗に毎日通っています。

家族の住むアパートと祖父達の住む店舗は、歩いて数分の距離。祖父の家の方が広いのですし、一緒に住めば家賃もかからないのに…と子供の頃は思っていたものですが、父と祖父祖母は顔を合わせると喧嘩する程仲が悪い為、子供の教育上よろしくない、ということで別居しているのでした。
私も弟も、優しくて何でも買ってくれる祖父が好きだったので、夏休みや大型連休にはよく泊まりに行っていたものです。

その日も夏休みで、私と弟はアパートとは違う和室での寝床に開放感を覚え、いつになくはしゃいでいたのを覚えています。

「もう夜遅いから寝なさい」

と言う祖母の言葉に、私達姉弟は床に就き眠ることにしました。けれど当時私は毎日楽しみにしているラジオ『ベストテン北●道』をヘッドフォンをして、祖母にばれないよう明かりを豆電球にして布団の中に潜り聞いていたのです。

寝ている場所はいつも仏間です。ここはお客様が来たら必ずここで寝て貰う場所らしく、押入の中には新しい布団でいっぱいです。

今思うと仏間に客人を?!と思うのですが、ウチの家族はちょっと変わり者が多いので、家族が社会の半分だった学生時代には疑問すら抱きませんでした。

弟も完全に寝静まり、ラジオも終わり…さあ寝ようと電気の紐に手を伸ばした時に始まりました。豆電球を消し、部屋が月明かり一色に染まったときです。ふと仏壇の隣を見ると、何か


白いモノ


が立っていたのです。私は今まで心霊現象になど遭った試しがなく、父や(父は僧侶の資格を持っているので当たり前?)弟(小さい頃はよく見て、夜中に大泣きし私を起こしてうるさかった記憶があります)は、よく見るのに私が見ないと言うことは、きっと霊感ないのだな!などとタカをくくっていたので、それを見たときは本当にびっくりで、

「はあ?!」

「やめてよ頼むよ」

「何で?!」

などの思いでいっぱいでした。アホらしく聞こえるかも知れませんが当時は必死です。その白いモノからは、どうしても目が離せません。馬鹿なことに私は


「目を離したら死ぬ」


と思っていたのです。(初めての体験ですし、霊=取り憑いて殺すモノだと思ってましたので)目を剥きだして凝視していました。段々と姿が判ってきます。当時は教会のシスターの白ずくめバージョンだと思っていましたが、今考えると


白無垢の女性


です。手を前でそっと重ねておしとやかに佇む姿は綺麗だと思いました(それ以上に怖かったですが)。例えるなら白無垢の女性の石膏像でしょうかね。今思っても何も恐怖を感じるようなことじゃありませんが、その時の私は全身総毛立って毛穴から汗が滲み出てました。寒気を感じているのに、何故か耳周り顔周りが熱くて、10年近く立っているのに今でもリアルに思い出せるくらいの感覚でした。

その白い女性は、私がずっと凝視していると、すっと壁の方にその格好のまま消えていきました。本当に


「すうぅーっ」


という感じです。
その壁には、我が地元が鰊漁で栄えていた頃の漁師や、その家族の白黒写真が飾ってあります。何故私に見えたのか判りませんし、誰だったのかもさっぱりです。

その霊が消えたあと、弟を叩き起こしたのは言うまでもないでしょう。
馬鹿な話ですがその後一緒に手作りの御札を作り、仏壇の側にばらまいたのです。いくら効果が無くても、それくらいしなくては私は眠れないくらい怖かったのですから。

朝起きると、祖父が一つ残らず手作り御札を捨てていました。

「昨日霊を見たんだよ!取らないでまた来るから」

と言うと、舌をぺろっと出し

「ばぁーか」

と一言。お茶目な祖父でした。祖父は見たことがある癖に信じない人らしく、父曰く

「仏はほっとけ」

が口癖だったとか。
その祖父も2年前に突然亡くなりましたが。

私がはっきりと姿形を見たのはそれだけです。ここまではっきり見えるものなのだ、と思いました。しかしどうも祖父祖母の家は居るらしいんですね。父も母も祖母もみたことがあるそうですし。

ちなみにこのお話、当時の『ベストテン北●道夏の心霊特集』みたいなコーナーに応募したら放送されました。その時のテープは手元に御座います…。(あ。ちなみに少々手を加えましたが(笑))

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