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□この話は「健坊様」が、
2007年2月23日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第百八十三話
誰かがそこに…


先程、『帰って来た…』と言うタイトルの話を投稿させて貰った健坊と言います。
数ある体験の中でもう一つ鮮明に覚えている体験を投稿させて頂きます。

私が小学校2、3年生の頃の体験です。
私は静岡出身で、小学校2,3年生の頃に林間学校で県内の梅ヶ島と言うキャンプサイトで林間学校を行いました。
この場所は、古くから温泉が有名で隠れた湯治場としても有名なんですが、梅ヶ島金山と言う今では廃鉱になった金山も在ります。

静岡には、数多くの金山の廃鉱が存在するのですが、梅ヶ島金山もその中の一つで、これ等の金山は幕府の資金源として重宝されていたので当時の国家最高レベルの軍事機密として詳細が詳しく残っていないらしいのですが、この金山は、江戸時代の頃、時の将軍徳川家康が静岡の駿府城に大御所となってご隠居した後、家康公自身が管轄していた金山です。

日本版のゴールドラッシュですね。沢山の鉱夫達がこぞって金やら砂金を探しに付近に集まったらしいのですが、極秘扱いの金山に勿論中々入り込める筈も無く、実際に当時鉱夫として働いていたのは全国津々浦々の罪人達だったらしいのです。
罪人達を強制的に働かせ、賃金も無しの待遇。更に、鉱夫としての専門知識がある様なプロフェッショナルじゃないですから、落盤事故等も度々あったらしく、金山入り口付近には数多くの無縁仏のお墓が点在しています。

話は戻して、そんな場所だとは当時小学生の私が行く前に知っている筈も無く、はしゃぎながら行ったんですが、遠足で金山付近に近付くにつれて何とも言えない緊張感に覆われていた私。実際に金山に到着する頃には、一刻も早くその場を立ち去りたくなる様な気持ちで一杯でした。

結局の所、金山付近では言い様の無い緊張感に苛まれた事以外は全く何も起きなかったんですが、事は金山に遠足に行った日の夜中、テントで就寝している時に起きました。

班に分かれて、それぞれのテントで寝る事になっていたのですが、私の班は男女合わせて5人の班で小学生ながらに女の子達とも一緒に1つのテントの中で寝る事に多少也とも興奮して中々眠れなかったのですが、ヤッパリまだまだ子供です。遠足の疲れもたたってかいつの間にか寝てしまいました。

時計も持っていませんでしたから何時頃だったか覚えてはいません。夜中にフッと目が覚め、トイレに行きたくなり寝ぼけながらも外に在るトイレに行こうと寝袋から這い出てテントの出入り口のチャックを上げている最中の事です。
チャックのジッパーを3分の1位上に開けた時です。開けた隙間から誰かの両足が見えました。『寝ぼけているのかな?』と思いましたが、何度見ても両足が見えます。

当時の幽霊系の知識で、私の中では『幽霊には足が無い!』って言う固定概念があったので始めは幽霊じゃないだろうと思ったんですが、何となく表現し難い感覚に苛まれ始めました。

言い難い緊張感。本能的に何かが『ヤバイ』と思い、チャックを上げる事も下げる事も出来ずに硬直したままの形になってしまいました。


『もしかしたら俺以外の誰かがトイレに行ったのかも…』


何て言う淡い期待を膨らませ、振り返ってテント内の友達の数を数えてみる事に…4人がちゃんと寝息を立てて寝ています。


『もしや、見回りに来た先生かな?』


って、またもや淡い期待を膨らませる私。両足の方に目をやると、間違い無く見回りに来た先生では無いという事が直ぐに分かりました。両足とも靴を履いていない素足だったんです。しかも、ボロボロと言うのか、現代人ではありえないようなゴツゴツした様な両足。そんな剛直な両足なのに、色は生気が無い様な真っ白。

そこで、私の中の全ての期待が崩壊し、とてつもない恐怖を覚え始めトイレ所じゃなくなりました。同じテント内で寝ている友達を起こそうとしましたが、中々起きてくれません。

怖くて怖くて、居ても立ってもいられなくなり、途中まで開いている入り口も閉めずに寝袋の中に身を隠す私。不幸な事は重なるもので、1番テントの入り口側が私の場所で、入り口側を向く事など隠れていてもしたくなかったので、友達の方を向いて隠れていました。
ただ、顔を外に出さなくても何となく『奴』が外に居る事が分かるんですよ。何か、
視線じゃないけど、先程から言っている言い表し難い緊張感が寝袋越しに背中に伝わ
って来るんです。

いつの間にか寝てしまっていた私。朝起きて、引率の先生達に念の為に昨夜見回りに来たかと聞いてみた所、見回りに行った事は行ったけど、私達のテントが一番先生達のテントから近い所だから一番に見回りに来ていて、その頃には私達は既に寝ていたと言うんです。それに変質者の類が外に立っていたとしたら、直ぐに分かるとも言いました。

その後、その『両足』を見た事はありません。別に何か危害を加えられた訳でもありませんが、あの時の恐怖感が強いのか梅ヶ島には2度と行きたくありません。


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