【路地裏】【体験談トップ】【管理者体験談】【読者体験談】【作品投稿
□この話は「健坊様」が、
2007年2月23日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第百八十二話
帰って来た…


今まで数ある体験の中で一番鮮明に、克明に見覚えしている実体験です。

私が小学校3年生の時の話です。

私には、9つと7つ年上の姉が居るのですが、実家には当時小学生の私と地元の高校に通う2番目の姉、それと父と母の4人が住んでいて、当時高校3年生の1番上の姉は同じ県内に在るものの、容易には帰って来れない高校の寮で生活していました。

当時の1番上の姉は、勉強や周りの環境から来るストレスの為か重度のホームシックにかかってしまい、毎夜の如く実家に電話がかかってきては、親に家に帰りたいと訴えていた事を子供ながらに良く覚えています。

そんなある日、両親共働きなので鍵っ子の私と2番目の姉が、たまたま同じ時に家に
帰って来ました。
何気ない会話をしながら玄関の鍵を開けて家に入る二人。靴を脱いで廊下に差し掛かった時です。
私と2番目の姉は、廊下から2階へと上る為の階段付近で1番上の姉の後姿を見かけたんです。
二人とも


『あれっ?』


って思いました。
何故なら週末ならいざ知らず、学校がある時に実家に帰って来る事なんて有り得なかったからです。

そんな日に実家に1番上の姉が帰って来るって事は、相当酷いホームシックなんだろうと2番目の姉は思っていたらしいのですが、1番上の姉が大好きだった私は無神経にも姉を呼び止め様と名前を呼びました。
しかし、疲れているのかうつむき加減のまま2階の彼女の部屋に行ってしまった姉。
2番目の姉は、

「お姉ちゃん疲れてるみたいだから、そっとしておいてあげようね」

って言われて、しぶしぶ諦める事に。
その後私と2番目の姉は、お互いの友達の所に遊びに行く為に出掛ける事になるんですが、『そっとしておく』と言う理由で1番上の姉には会わずに出掛けました。
私も2番目の姉も、1番上の姉が家に居るから『鍵はかけて出掛けなくても良い』と思い、玄関の鍵を開けっ放しにしたまま出掛けました。

夕飯時、家に帰宅すると母が真っ先に私の所に現れた途端に『何で鍵をかけずに出て行ったのか!?』と言う理由で怒られました。
私は、『1番上の姉が帰宅してるのに何でそんなに怒るんだろう?』、『鍵を閉め忘れたのは俺じゃなくて1番上の姉なんじゃないの?』って思い、当然の如く「姉ちゃん帰って来てるんだから、閉め忘れたのは俺じゃないよ!」って母に言いました。

ここまで来れば読んで下さってる人達も察しがつくと思いますが、「こんな日にお姉ちゃんが帰って来てる訳が無いじゃない!」と更にこっ酷く叱られる私…。何とも腑に落ちない。絶対に見たと言っても、勿論信じてもらえる訳も無く、2番目の姉が帰って来る頃を見計らって、再度母に二人で訴えたのですがやっぱり信じてもらえず…そこで二人で1番上の姉の寮に電話しかけてみる事にしました。

電話をかけてみると、ホームシックのせいか若干テンションの低い声ではありますが、間違い無く1番上の姉の声が受話器越しに聞こえてきました。
私達は、その日家で姉を見掛けた事をつぶさに報告し、その上で姉が家に帰って来ていたか聞いてみました。しかし、私達の期待や予想に反し姉は実家には帰って来ていないと言いました。
では、あれは何だったんだろうって私と2番目の姉とで話をしていると、1番上の姉が何時頃の話だったのかと聞いてきました。私達は、大体の時間を姉に告げると色々記憶を辿って、その辺りの時間帯に彼女が何をしていたのかを教えてくれました。

姉が言うには、先程から何度か話に出しているホームシックにより気分が相当滅入っていて、心労により当時は不眠症に近い症状も出ていたらしく、変な時間に寝ている事もしばしばあったらしいのですが、私達が姉を見掛けた時間はその『変な時間』だったらしく、姉がクラスも終わり自分の部屋で寝ていた時間だったのです。
ここまでは、ホームシックで大変って事以外は何の変哲も無い話の内容なんですが、その後に続く話を聞いて私達は唖然としました。

姉の話では、寝ている時に夢を見たらしく、夢の内容が実家に帰っている内容だったらしいのです。そして、家に入り廊下を通って2階に在る自分の部屋へと続く階段を上っている最中に、私に「お姉ちゃん!」と呼び止められたらしいのです。
彼女は、夢の中で私の声が聞こえてはいるものの、そのまま自分の部屋に入って行った途端にその夢は終わるのですが…。
実際、私達3兄弟は大小様々ですが3人とも『霊感』みたいなものが有り、今迄にも見たり感じたりと言う事は何度もありましたが、あそこまでハッキリとした者を見た事が無く、今でも夢か現か幻かなんて考える事もあるのですが、私だけでなく2番目の姉も目撃していますし、ハッキリ1番上の姉だって事も分かっていますし…。

私達は、この時見た姉の事を生霊だと思っています。重度のホームシックになり、家に帰りたい一心で体は寝ているのに彼女の中身の方だけが家に帰って来てしまったと思っています。

それ以降、姉の『生霊』を家で見掛ける事は無くなりましたが、姉と言えども間近でハッキリと鮮明に見える『生霊』と言うのは、今でこそ『凄い体験!』で終われるのですが、当時小学生だった私には余りに衝撃的で摩訶不思議な体験だったので、今でもハッキリ記憶に残っています。


路地裏】【体験談トップ】【管理者体験談】【読者体験談】【作品投稿