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□この話は「まー坊様」が、
2005年10月18日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第百六十二話
山の中のレストラン

今回も友人Hの話です。

もう三〜四年程前になると思うのですが、その頃Hは入隊していた自衛隊を辞め、新たに職についていました。

その会社は、某ファミレスグループ傘下の子会社でした。
その年の春、ある県の山中に新しくレストランが出来ました。
そのレストランはバンガロー風の木造建築物で雰囲気が良く、山中なので夜景が綺麗、食事もなかなか美味しかったので結構評判の店となり、客足も好調でした。
しかしその反面、従業員は長く居付く者がおらず、人手の問題をいつも抱えていました。
その年の冬、クリスマスディナーを出す時期には予約で連日満席になっており経営者側では喜ばしい事でしたが、店側では人手が足りないので頭を抱えたくなる状態でした。

そんな理由からHと後輩Kの二人が、一時的な補充として手伝いに行ったんです。
Hの見た目にも結構おしゃれな感じで、客が多いのも頷ける様な店だったといいます。
仕事的にも毎日忙しいという面はあるものの、死ぬほどキツイというわけでもない。
従業員が長続きしない理由は特にないように思えました。

しかし翌日より予約客の来店が始まり、大忙しでそんな疑問はどこかに消えてしまっており、連日深夜まである仕事をなんとかこなしていました。
そして最終日の仕事が終わり、店内でささやかなパーティが開かれました。
その最中に、ふとHは思い出して開店時からずっと店で働いている先輩に従業員が長続きしない理由を聞いてみました。
するとなんとなく予想はしていましたが、こんな答えが返ってきました。

「ここは霊が出るからね…」と。

真偽は定かではないらしいのですが、建設中に地中から白骨が出たとかいう噂があるようで…。

深夜まで仕事をしていると女の霊がでるといい、それを見た者が全員辞めてしまうので、長続きがしないということでした。

「ここで仕事を続けられる奴はよっぽど霊感がない奴か、見えても平気だという変わり者だけだ」

と先輩は言っておりました。

その話を聞いて、変わり者部類の後輩Kは肝試しをしようと言い出しました。
Hは翌日の昼までは店を手伝って、地元へ帰る予定となっていたので、少しでも休みたくて断りました。
他の従業員も疲れているし、好き好んで見ようとする人間はいなかったので拒否しましたが、Kはもうその気になってしまっておりしつこく誘っていました。
そこでKを店の休憩室に泊まらせようとHが提案しました。
明日の朝まで一人で店にいるという肝試しの設定に、さすがにKも嫌な顔をしましたが、意地を張り泊まると言い出しました。
Kは霊感などない方だったので、Hもまあいいかと思い山の麓にある社員寮へと帰りました。

翌日の朝、店へと出勤したところ泊まったはずのKの姿が何処にもありません。
店のドアの鍵も開けっ放しで外に出たようでした。
幸い山の中の店だったので部外者に侵入された形跡はなかったものの、休憩室はやたらと物が散乱している状態でした。
その日は店休日だったので、片付けの為に出勤した従業員は例の先輩だけだったので後で問題にならないように内々に済ませてもらえる事にはなったんですが、肝心のKがいないと話にもならない。
Kの携帯を呼び出して、何処にいるのか聞いてみると社員寮にいると言うのでとりあえず店へ呼び出しました。
とりあえず一通り小言で嗜めておいて、理由を聞いてみたところ、Kは昨夜の出来事を話し始めました。

Kはみんなが帰った後とりあえず休憩室でテレビを見ていました。しばらくは静かだったんですが店内の方で何か物音が聞こえました。
Kも一応は見に行きましたが何も異常はなかったので休憩室に戻りました。

するとその直後に再び店内で物音が…。

再度確認のために店内を見に行きましたが、やはり異常なし。
気味が悪いので寝てしまおうと布団を被っていたのですが、今度は休憩室内で物音が聞こえるんです。
恐る恐る被っていた布団の隙間から室内を見てみると、地震でもおきているかのように室内にある物が揺れ(その日地震は起きてません)、台の上に置いてある物などが次々と落下していました。
そこでKは耐えられなくなって店から逃げ出したということでした。

話を聞いてあまり責める事も出来なくなってしまったので、Kにも片づけを手伝わせる事で、終わりとしました。
片づけも終わったので、先輩に車で駅まで送ってもらっている時にHはふと店の方を振り返りました。
すると、誰もいないはずの店内の窓から女性らしき影がこちらをじっと見ていたそうです。
ちなみに先輩は見えていても平気な変わり者だったようで、Hがその話をすると、「特に害はないから大丈夫」と言ったそうです。

話が長くてすいません…。

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