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□この話は「デブ専なんで 様」が、
2005年8月3日に投稿して下さった作品であります。
■投稿作品第百五十二話
伝言ダイヤル

これはまだ携帯電話にメール機能が付き始めの頃の話です。

世の中にはプッシュ式の公衆電話が百メーターおきに在り、その時住んでいた街の家の近くにも在りました。
購入したツーショットカードで伝言をのこし、携帯で確認する。
そんな事をして遊んでいました。

伝言の返信はすぐにありました。
5件の内返信に返事が返ってきたのは3件。
内、1件は消滅し1件は逢う事ができ、残った1件はやり取りが続いた。

お互いに何か隠す訳でもなく、ただ午後10時にならないと話せないだけでした。

その時の彼女の状態はこうでした。
他府県からこちら(その時僕の居た)に来て1年。
方言が元で、友達もなかなかできず今はひとり。
僕の残した伝言内容とは違ったけど、声が肉親に似ていたから話したくて!
そして淋しい!誰も来てくれない。
自分を誰かに伝えたい。

別に悲しい話し方でもなく、明るく時折そんな事を口にしていた。



2ヶ月ほど話して不意に


「そろそろ帰るかな…」


彼女が言った。
互いに知らない事が無いくらいに話していたので。


「そろそろ顔を見せてあげないとね。」


僕がそう言うと。


「言うと思った、最後に顔が見たい。」


でした。
僕から待ち合わせ場所に向かい待っていると、携帯が鳴り素早く


「そのそばにある公衆電話にカードを入れて、わきにある階段を上って来て!」


と言って切れた。

言う通りにして階段を上がると、ベンチの側に彼女は居た。
そこは街の夜景が眼下に広がり、見晴らしのいい場所でした。
気のせいか彼女にだけ、涼しげな風と暗い中少し光って見えた。
どれだけか時間が経ち、どこからか



「PIー…PIー…PIー…」


と聞こえ、彼女が最後に言った。



「ありがとう!本当は死んで欲しかった。」



なんとなく分かっていた僕は


「逢えてよかった?」


と聞くと、笑って消えた。
消えて少しして、


「夜景の反対がお墓だからね…」


と思っていると、


「やっぱり憑いていこうかな!?」


と聞こえたので、丁寧に


「帰れ!!」


と答えると、笑い声がしてフェードアウトしていった…。


残念なのは彼女が太っていなかった事。

なぜなら…デブ専なんで。


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