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■第十三話
誰もいないハズ?

いまから七年ほど前の出来事なんですが…。
オレは、後にも先にもそういう体験をしたことがないので、基本的に未だに霊のシワザとかそういう風には思っていません。ただ、謎を抱えたまま七年もたってしまったので、ここらで誰かに聞いてほしかったから投稿したのかも知れません。

当時、学生時代に、江戸川区にある古本屋さんでアルバイトをしていたときの話です。学生業のかたわら、そこでは、あるていど仕事を任されている立場でしたので、遅番のときは、いつも戸締まりをして帰るような感じでした。

その日は、閉店の12時を過ぎてから、もう一人の男性アルバイト君とオレの二人で、棚卸をする予定になっていました。効率良く終了させるため、二人それぞれ範囲を決めて、古本のわりに広い店内の、端と端で作業をしていました。そして、作業も終盤にさしかかった、午前2時くらいのことでした…。

「すみませーん…」

と、入り口のほうから女性の声。店内の離れた場所で作業をしていた相方が、オレのほうへやって来て、

「お客さん?」

と、オレに聞いてきました。店内は明かりがついていたので、まだ営業してると勘違いをしたお客さんが声をかけてきたものと思い、二人で入り口に行ってみました。ですが、お客さんは居なかったので、あきらめて帰ったか、オレたちが、なにかの音とと聞き違いをしたものと思い、そのときはたいして気にもせず、それぞれの持ち場に戻りました。ところがその数分後、今度は、あきらかに店内の中央。オレと相方が作業をしている、ちょうど中間あたりから、その声は聞こえてきました。

「すみませーん…」

オレはもしかしたら、お客さんがまだ店内に残っていたのかと思いました。なぜなら、古本屋ではときに、数時間も同じ場所で立ち読みをしている人がいて、以前も閉店過ぎまでお客さんが残っていたことがあったので、そのときも、まさかとは思いつつも、声のあったあたりに行ってみました。ところがやはり、そこには誰も居なく。同じく声を聞いた相方もすぐ、そこへ来たので、二人一緒にあたりへ声をかけました。

「誰かいらっしゃいますかー」

しかし誰も返事はありませんでした。二人で顔を見あわせて、頭をかしげるばかりでした。

「気のせい???…はは……。

笑ってはみたものの、有り得ない状況に二人とも、かなりビビっていたと思います。図書館を思い浮かべてもらえれば分かると思うんですが、そこも、本棚がずらーっと並んでいる感じで、本棚と本棚のあいだの通路状になっているところに、二人とも、しばらく立っていました。オレと相方は二人で、

「聞こえたよねぇ?」

「誰かいるよねぇ?」

と、お互い確認するように、聞き合い、状況を把握しようと必死でした。

「すみませーん…」。

「…!!」

今度は、なんと、オレら二人のいる列のとなり、本棚をはさんで、その向こう側から、はっきりと聞こえてきたのです。相方が

「ヤバイ!帰ろう!」

と言い、オレも当然のごとくその意見にしたがい、仕事も途中でしたが、そのまま逃げるように帰りました。

基本的に霊とかを信じていないオレですが、その古本屋さんがあった建物、実は病院だった建物で、古本屋として使っていたのは一階の半分だけ。店内ににある扉から奥へ行けるのですが、そこは各部屋の入り口に、「レントゲン室」とか「第一診察室」などのプレートがそのまま残っているんです。そういう建物でしたので、オレもあのときはかなり動揺してしまいました。直後、相方は辞めて、店も一ヶ月ほどでつぶれました。それまでの一ヶ月間、懲りずにオレは何回かそこで遅番をやりましたが、あの声はそれっきり聞いていません…。

・匿名さんの体験談
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